調べて最初に気づいたこと

このサイトを作るにあたって、最初にノストラダムスの予言を端から端まで調べたとき、正直驚いた。詩は約940篇あるのに、「的中した」として語られるのはせいぜい20〜30篇だ。残りの900篇以上は、いったいどこへ消えたのか。答えは単純で、誰も覚えていないのである。

外れた予言は語られない。当たった予言だけが語り継がれる。この非対称さを知ったとき、「ああ、そういう仕組みになっていたのか」と少し拍子抜けした。予言の「的中率」は、測り方そのものに問題がある。これが確証バイアスというもので、私たちは無意識に「当たった」情報を集め、「外れ」を流してしまう。

さらに厄介なのが、多くの予言が意図的に曖昧に書かれていることだ。「西の大都市で大きな炎」という一文は、ロンドン大火にも東京大空襲にも911にも当てはめられてしまう。解釈の幅が広い予言ほど「的中」しやすく、具体的な予言ほど外れたとき忘れられやすい。これがバーナム効果の仕組みだが、頭でわかっていても、いざ「当てはまる」と感じると引っ張られるのが正直なところだ。

「ジーン・ディクソン効果」という皮肉

JFKの暗殺を予言したとされるジーン・ディクソンの話は、調べれば調べるほど複雑な気持ちになった。実際には予言は特定人物を指しておらず、選挙直前にディクソン自身が「ニクソンが勝つ」と撤回していた。しかも20世紀のアメリカ大統領は4人に1人が在任中に死んでいるので、統計的に特別珍しい話でもない。

「当たった予言だけが記憶に残り、外れた予言は忘れられる。これがすべての予言者の評判を作る仕組みだ。」— ジョン・アレン・パウロス

それでもJFKの暗殺後、ディクソンは「世紀の予言者」として名声を得た。これを「ジーン・ディクソン効果」と呼ぶが、個人的にはこの名前が付いているのが皮肉で面白いと思っている。予言者への批判ではなく、私たち受け手の認知の歪みに名前が付いているのだ。

それでも外れを記録したい

こうした仕組みを知れば知るほど、「だから外れ予言を記録しなければいけない」という気持ちが強くなった。的中例だけを集めれば神話になる。外れを並べて記録することで、初めて予言を批判的に見る材料ができる。このサイトに「信頼性スコア」と「的中精度」の二軸評価を設けたのはそのためで、当たった・外れたを同じ重さで記録することにこだわっている。