経歴・人物
イザヤ(ヘブライ語:イェシャアヤー「ヤハウェは救い」)はアモツの子として、エルサレムで生まれた。ユダ王国の王宮に出入りする高い身分の人物であったと推定されており、ウジヤ・ヨタム・アハズ・ヒゼキヤという4人のユダ王の治世、つまり紀元前740年頃から681年頃にかけて約40年間活動した。
イザヤ書6章に記された「召命体験」は有名で、神殿でセラフィムに口を清められる幻視の中で預言者として召命を受けたとされる。当時のユダはアッシリア帝国の脅威にさらされており、イザヤはアハズ王・ヒゼキヤ王への政治的助言者としても機能した。
イザヤに帰せられる最も注目すべき预言の一つが、バビロン帝国の滅亡とキュロス(ペルシア王、在位紀元前559〜530年)の名を明示した预言(イザヤ書44〜45章)である。批判的学者はこれを、キュロスの登場後に書かれた「第二イザヤ」(40〜55章)の作とみなし、预言ではなく時事的文書と解釈する。
ユダヤ伝承によれば、イザヤはマナセ王(アハズの孫)の治世にのこぎりで引き裂かれて殉教したとされる。新約聖書でも多数引用され、キリスト教神学における「苦難のしもべ」解釈(イエスの预型)として重要な地位を占める。
収録予言(6件)
本サイトに記録したイザヤの予言を、成就状況の判定・原文・検証つきで掲載しています。
イカバボドの廃墟の予言(イザヤ書 17章)
成就「見よ、ダマスカスは都であることをやめ、廃墟の山となろう」という预言。紀元前732年にアッシリアのティグラト・ピレセル3世がダマスカスを占領し、廃墟にしたことで成就したとされる。
見よ、ダマスカスは都であることをやめ、廃墟の山となろう。アロエルの城市は廃れて、群れの休む所となり、恐れる者もなくなる。 ──(原語:ヘブライ語)
出典:イザヤ書 17章1節
- 旧約聖書 イザヤ書17章
- アッシリア遠征碑文(ティグラト・ピレセル3世)
苦難のしもべ—刺し貫かれ、打たれ、復活する者(イザヤ書53章)
成就紀元前700年頃に記されたイザヤ書53章は「彼は私たちの背きのために刺し貫かれ、私たちの罪のために打ち砕かれた」「彼は生ける者の地から断ち切られた」と記す。キリスト教はこれをイエス・キリストの受難・十字架刑・復活の予言として解釈し、新約聖書でも繰り返し引用される最重要メシア預言とされる。ユダヤ教側は民族イスラエル全体を指すと解釈する。
彼は侮られ、人々からも見捨てられた。痛みの人で、病を知っていた。(中略)しかし彼は私たちの背きのために刺し貫かれ、私たちの咎のために砕かれた。彼への懲らしめが私たちに平和をもたらし、その打ち傷によって、私たちは癒やされた。 ──(原語:古代ヘブライ語)
出典:イザヤ書53章1〜12節
- 旧約聖書 イザヤ書53章
- Dead Sea Scrolls(死海文書)イザヤ写本(前2世紀)
バビロンは二度と住む者のない廃墟となる(バビロン滅亡の予言)
成就イザヤ書13章はバビロン帝国の完全な滅亡を予言し「二度と住む者もなく、代々にわたって人が住み着くこともない」と記す。紀元前539年にキュロス大王率いるペルシャ軍がバビロンを陥落させ、その後バビロンは急速に衰退した。現在のイラク・ヒッラー近郊に廃墟が残る。古代の大都市が完全に廃墟化するという予言は顕著な的中例とされる。
天の万象は腐り、天は巻物のように巻かれる。(中略)カルデア人の誇り、バビロンの栄光、神が滅ぼしたソドムとゴモラのようになる。二度と住む者もなく、代々にわたって人が住み着くこともない。 ──(原語:古代ヘブライ語)
出典:イザヤ書13章19〜22節
- 旧約聖書 イザヤ書13章
- ヘロドトス「歴史」(バビロン記述)
「コレシュ(キュロス)」の名を150年前に予言(イザヤ書44〜45章)
成就イザヤ書はペルシャ王キュロス2世(コレシュ)の名を約150年前に具体的に記し、「彼がエルサレムを再建し神殿の基礎を据える」と予言した。キュロス2世は紀元前539年にバビロンを征服し、バビロン捕囚のユダヤ人解放令を出して実際にエルサレム神殿の再建を命じた。固有名詞を150年以上前に予言した例として聖書預言研究上きわめて重要視されている。
主はその油注がれた者、コレシュについてこう言われる——「わたしが彼の右の手をとって、諸国民を彼の前に打ち倒す」。(イザヤ書45:1) ──(原語:ヘブライ語)
出典:イザヤ書 44章28節・45章1節
- イザヤ書 第44〜45章(ヘブライ語原典)
- 死海文書 イザヤ巻物(Qumran 1QIsa)
- キュロスの円柱(大英博物館所蔵)
アッシリア軍のエルサレム包囲と神による撃退(イザヤ書37章)
成就ヒゼキヤ王の時代、アッシリアのセナケリブ王がエルサレムを包囲した際、イザヤは「アッシリア王はこの都に入ることなく、矢一本も射込まれない。神がこの都を守る」と予言した。史書によれば、その夜アッシリア軍18万5千人が死亡し、セナケリブは包囲を解いてニネベに退いた。
それゆえ、主はアッシリアの王についてこう言われる——「彼はこの都に入ることなく、ここに矢を射込むこともなく……わたしがこの都を守って救う」。(イザヤ書37:33〜35) ──(原語:ヘブライ語)
出典:イザヤ書 37章33〜37節
- イザヤ書 第37章(ヘブライ語原典)
- 列王記下 19章(並行記述)
- セナケリブの年代記(大英博物館所蔵)
ユダヤ人の帰還とイスラエル再興(荒野に水が湧く)
部分的イザヤ書11章は「主は再び御手を伸ばして、民の残りの者をアッシリア、エジプト(中略)から買い戻される」と散在するユダヤ人の帰還を語り、35章は「荒野に水が湧き出、砂漠に川が流れる」と荒地の回復を予言する。1948年のイスラエル独立と、ネゲブ砂漠の農地開発・灌漑事業と符合するとしてキリスト教・ユダヤ教の末日論者に引用される。
その日、主は再び御手を伸ばして、ご自分の民の残りの者を買い戻される(中略)主は諸国の民のために旗を揚げ、イスラエルの追われた者たちを呼び集め、ユダの散らされた者たちを地の四方から集められる。 ──(原語:古代ヘブライ語)
出典:イザヤ書11章11〜12節、35章1〜7節
- 旧約聖書 イザヤ書11章・35章
- Walter C. Kaiser「The Messiah in the Old Testament」
参考文献・出典
- 旧約聖書 イザヤ書
- Joseph Blenkinsopp「Isaiah 1-39」Anchor Bible Commentary